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出版社:新興医学出版社
編 著:林 拓二
ジャンル:精神医学
判 型:B5
発行年:2008年
ISBN:9784880026763
税込価格:5,880円
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| 「あとがき」より抜粋 |
本書は、わが国で独自に発展してきた非定型精神病(満田)の概念を紹介することを目的に、我々がこの30数年に積み重ねてきた非定型精神病の研究を中心に纏めたものである。
80年代以降、日本においてもDSMなどの国際標準の操作的診断が隆盛をきわめ、診断の信頼性を高めること、すなわち、誰しもが一致した診断を得られるようにすることが優先されてきた。このような時代、非定型精神病の概念は、意識障害などの客観的に評価しがたい症状を重視するがために、信頼性が乏しい曖昧な概念であるとされ、時代の大きな流れからは取り残されてきた。そして、どちらかといえば過去の概念と見なされてきたように思われる。
しかしながら、本書の出版を考えたのは、近年DSM-IVの作成にかかわった米国の著名な精神科医でさえも操作的診断基準の限界を指摘するようになり、DSMの登場によって生じた精神医学の均質化が、精神医学の新たな発展を阻害しているのではないかと、多くの精神科医が危惧するに至っていると思われるからである。精神医学はいまだ発展途上にある学問である。多くの概念や臨床徴候を、研究者間の一致率が低いとの理由で等閑にするのであれば、研究の新しい展開は期待できないであろう。この点で、我々は非定型精神病の概念が再び見直されるべき時を迎えていると考える。
我々は、操作的診断の有用性を認めながらも、折に触れ、その問題点を指摘してきた。操作的診断の明快さは、学生や看護職員、あるいは基礎の研究者にとって理解しやすいと評価される一方で、その浅薄さを指摘するのは我々だけではあるまい。我々は、疾病学に基づいた疾患分類の重要性と、症状と経過に関する詳細な臨床研究の重要性を、繰り返し強調してきたのである。
精神医学が現在置かれている状況を見ると、分裂病と躁うつ病の間においてさえ、それを鑑別する客観的な証拠は、今なお見いだされてはいない。まさに、一昔前にシュナイダーが述べたように、内因性精神病には「鑑別診断学は存在せず、あるのは鑑別類型学でしかない」のである。われわれは、これまでの知見をただ組み直すのではなく、斬新な発想で新しい精神医学を構想していかなければならない。非定型精神病は、現在もなお、その独立性についての証拠が見いだせないとしても、臨床的にきわめて特異な症状と経過を示す一群の病型であり、精神分裂病(統合失調症)や躁うつ病(気分障害)とは明らかに異なる。このような認識は、臨床に携わる精神科医には共通したものである、「非定型精神病」の概念に多くの批判があるのものの、臨床的な概念として存続する理由は、このように明白な臨床的事実からであろう。
非定型精神病は、内因性精神障害の分類に関する精神医学の基本問題として、これまで多くの学者の関心を引き、主として学問の場で議論されることが多かった。それ故に「Clinical Genetics in Psychiatry」をはじめ、満田門下による英文の出版が数点あるものの、残念ながら、日本語による出版はなく(中山和彦氏による著書はあるが、満田の概念とは異なる)、我々の意図が一般の人たちに正しく理解されているとは言い難かった。そこで、近年のインターネット時代に、不正確な情報が独り歩きすることを恐れ、あえて本書の出版を考えたしだいである。しかし、本書もまた、生硬な文章からなる学術論文を主に構成したために、一般の方でも読みやすいように、文中の外国語表記をできるだけ少なくし、図表や文章を一部書き改めてある。さらに、総説や講演記録などをも収載し、非定型精神病の研究に関する我々の意図が、正しく、容易に、理解されるように心がけた。
本書が、非定型精神病の概念をさらに洗練し発展させる一歩となることを願う。本書を一読してもらえればわかるように、非定型精神病は、臨床的に有用な概念であるのみならず、学問的にも、内因性精神病における病因研究の突破口となるに違いないと考えるからである。
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| 主要目次 |
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第1章 |
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わが国における非定型精神病の概念 |
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第2章 |
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海外における非定型精神病の概念 |
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第3章 |
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診断基準における非定型精神病 |
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第4章 |
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非定型精神病の症状学と臨床研究 |
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第5章 |
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非定型精神病の生物学的研究 |
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第6章 |
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非定型精神病の治療 |
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第7章 |
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まとめにかえて |
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索 引 |
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